名古屋・宗次ホールでの1週間の研修で学んだこと

こんにちは、(株)Locatell代表取締役社長の吉田佐和子です。

現在、弊社ではわたしの故郷である京都府福知山市堀にある敷地に、文化ホールとカフェを中心とした複合施設を建設する『福知山音楽堂プロジェクト』を進行しています。

多くの方々のお力添えのおかげで、一歩ずつ前進しているものの、一から舞台を創っていくうえで、やはり現場を知ることが大切だと感じ、この夏、愛知県名古屋市にある宗次ホールで研修をさせていただきました。

宗次ホールオーナーの宗次氏と

わたしは、2021年の初旬まではクラリネット奏者として13年間活動してきました。

しかし、演奏者としてホールに立ったことは数多くあっても、コンサートが開催される際に、ホールのスタッフの方々はどのような動きをしておられるのか等は詳しく理解出来ていませんでした。

弊社のプロジェクトとして福知山にホールを建てるにあたり、現場で働くスタッフの皆さんが普段どのような仕事をされているのか?ホールにはどのような仕事があるのか?などを学びたいと思い、研修に臨みました。

宗次ホールとは?

宗次ホールとは、2007年に創業された愛知県名古屋市栄にある310席の音楽ホールです。

「もっと身近に、もっと人々の身近にクラシックを」をテーマに年間365公演(コロナ前は400公演程開催)のコンサートを企画・開催されています。

宗次ホール
https://munetsuguhall.com/

宗次ホールは非常に音響に優れたホールで、残響は約2秒。

シューボックス型に近い変則五角形をしており、色んな方向へ向かって音が拡散されていくようになっています。

ちなみに、「宗次ホール」の「宗次(むねつぐ)」とは、全国展開しているカレーハウスCoCo壱番屋の創業者である宗次徳二(むねつぐ とくじ)*1さんの名前から来ています。

館内の様子

宗次ホールは、地上7階地下1階のビルの1階から5階までを占めています。

まず、入り口を入ってすぐの1階には事務所があり、ここにはチケットセンターもあります。

なお、1階にはチャリティーボトルが置いてあり、いつでも活動を支援したい団体に対して気軽に募金をすることが出来ます。

階段で2階に上がると、音楽関係の様々なグッズが買えるショッピングコーナーが。

宗次オーナーのご著書も購入することができます。

ちなみに、わたしのおすすめは最新刊の『独断 宗次流 商いの基本』です。コロナ禍でなかなか厳しい状態が続く業界も多いと思いますが、とても前向きなパワーをもらえる内容となっています。

2階(ホール1階席がある)ホワイエはこのようになっています。

奥にあるドリンクコーナーでは、新型コロナウイルス感染症が蔓延する以前は、ほぼ毎日宗次オーナーが立ってらっしゃったそう。

CoCo壱番屋の原点は、喫茶店。またここで、宗次さんがお客様たちにドリンクを提供できる日が早く来ると良いですね。

同階にはクロークコーナーもありました。

ちなみに、宗次ホールには2台のピアノがあるのですが、その日使われている楽器はこんな風に分かりやすく掲示されています。

ピアノが2台あると、演奏者が好む方を選ぶことができますし、2台ピアノを使う公演も出来ますね。

3階(ホール2階席がある)には78席の客席があります。

また、お客様が使用されるお手洗いがとても美しかったのも印象的でした。

宗次ホールの特徴

ここからは宗次ホールの特徴を3つご紹介します。

1.年間公演数日本一!?年間300本もの自主公演を企画

わたしは今回1週間研修にいかせていただいたのですが、おやすみが1日あったものの、残り6日間はずっと主催公演がありました。

宗次ホールはとにかく公演数が多く、様々な編成や演奏者の公演を楽しめるほか、価格帯もコンサートシリーズによっては安価なため、気軽に音楽を楽しむことができます。


2.特色ある3種類の企画コンサート

宗次ホールには、ランチタイムコンサート、スイーツタイムコンサート、通常公演があり、全て主催公演となっています。

特に、宗次ホールの特徴の1つでもある『ランチタイムコンサート』は、公演時間1時間・チケット価格は1000円となっているほか、曲目紹介つきで、プログラムの8割以上は有名曲。さらに、1曲10分以内の曲となっているため、クラシックに馴染みのないお客様でも楽しめる内容になっています。

左から、ランチタイムコンサート、スイーツタイムコンサート、通常公演のチラシです。

3.まるでコーヒーチケット!宗次ホールコンサートクーポン


名古屋の皆さんは、行きつけの喫茶店に行ってコーヒーチケットでコーヒーを飲み、朝食をとることが多いそう。

このコンサートチケットのシステムは、カレーハウスCoCo壱番屋を創業された宗次さんが、もともとは喫茶店を営業されていたことから、そこで使用していたコーヒーチケットのシステムをコンサートにも導入されたんだそうです。

1枚1000円のチケットが13枚綴りになっており、1万円で販売されています。1回購入すると3000円もお得なんですね。

有効期限もないことから、創業当時から大変好評で、年間2回ある販売時期には多くのお客様がお求めになるそうです。

レセプショニストではなく「気配りスト」

通常コンサートにお客様が来られた際にホールのホワイエなどでお客様対応をするスタッフのことをレセプショニストと言いますが、宗次ホールではお客様へ気配りをする役割であるという考えから、「気配リスト」という名前がついています。

気配リストの仕事は、お客様へのご案内・対応やクロークでのお預かり、物販があった際の対応、トイレの清掃など、主にご来場くださったお客様への対応がメインになります。

研修内容について

1週間の研修は、まずはチラシを整えることから始まりました。

宗次ホールには、新聞社に広告を挟むために置いてある機械があり、簡単にパンフレットと共に折り込むチラシをまとめることが出来ます。

本当に公演数が多いので、チラシの量も物凄い量です。

まとまった枚数のチラシを整えるために、こちらの機械も活用しました。

これらの機械のおかげで作業効率が上がり、スピーディーに作業することが出来ました。

また、入り口でお客様をお出迎えしたり、ホワイエでCDと楽譜を販売したり、公演終了後の客席のチェックやトイレ清掃なども行いました。

日程の後半は、企画担当でもある副支配人の西野さんに色々なことを教わりました。

企画の決め方や演奏者へのブッキングについて教えていただいたり、ピアノをピアノ庫に収納したり、本番中にピアノを移動するお手伝いなども行いました。

また、舞台上の演奏者への音の返りに重要な、こちらの白い壁の秘密もお伺いしました。

ほかにも、コンサート前のリハーサルにも立ち会わせていただき、その際に演奏者の方とどのようなやりとりをされているのか、学ぶことが出来ました。

宗次ホールの徹底した感染症対策

お客様の誘導をするのと同時にしっかりとチェックするように指示を受けたのが、マスクの付け方です。

宗次ホールでは、このようにマスクをつけたときとつけない時の感染症対策リスクを明記したチラシを配布されており、入場時にも鼻をマスクで覆っておられない方や、少しマスクがずれている方にはお声がけをしていました。

こうした取り組みが徹底されていることによって、宗次ホールはお客様に安全を届けておられるように感じました。

また、事務所の開演前、閉演後、事務所のアルコール消毒もされており、人が手で触るところをしっかりと除菌されています。

また、パンフレットはお客様自身の手でお取りいただくようになっています。

開演までの時間にも、舞台上にある感染症対策防止のためのアナウンスがよく見えるようになっていました。

宗次オーナーの差し入れカレー、CoCo壱番屋のデリバリー。カレー三昧の一週間

研修期間中、なんと宗次オーナーが作ってくださって差し入れしてくださったカレーを食べられる日がありました。

こちらは、エビと卵のカレーです。チーズをのせると、まろやかな味になり美味しかったです!

月に数回、宗次オーナーが何か作ってくださるというお話は聞いていたのですが、偶然そのチャンスがあって嬉しかったです。ちなみに、メニューはカレーではないときもあるそうです。

ちなみに、夜ご飯にCoCo壱番屋のデリバリーを利用した日もありました。

注文後すぐに届けてくれて、サクサクのカツがすごく美味しくて、店舗で食べるのもいいけど、デリバリーも良いな!と感じ、なんと2日連続で注文してしまいました(笑)

1週間の滞在中にカレーは4食くらい食べたので、人生で一番カレーをたくさん食べた日々だったと思います。

朝の清掃活動について

宗次オーナーのご著書を読んで驚いたのが、365日、宗次ホールの前〜広小路通の沿道をお掃除されていることです。

◆参考URL
ココイチ創業者「店のまわりを掃除するなら、365日続けないと意味がない」
https://president.jp/articles/-/39830?page=1

なぜ、創業者は4時起きで掃除するのか?
https://president.jp/articles/-/2389?page=1

わたしは7日間の研修中3回清掃に参加しました。

時間は朝の7時から8時までの1時間。今回は花殻摘みと雑草を抜く作業を担当しました。花殻も雑草も1つ1つは軽いわけですが、1時間作業するとしっかりと重さのある量になります。

咲き終わった花殻を1つずつ取りました

研修させていただいた時は、ちょうどハイビスカスとマリーゴールドが美しく咲いていました。色が全部黄色なのは、なぜだか分かりますか?

そう、カレーの色に合わせて黄色なんだそうです。

研修に行かせていただいた7月9日〜15日の間は、朝とはいえ1時間作業していると汗だくになる暑さでした。

ちなみに、ビニール袋や手袋はすべて用意してあるので、手ぶらで参加しても大丈夫。

宗次オーナーがすごく優しくて、初めて参加したわたしにも丁寧に教えてくださったので、嬉しかったです。ちなみに、宗次オーナーは黄色の上着と帽子を着て作業しておられるので、もし掃除の時間帯に道路を通られた方はすぐに分かるはず。

毎日人数は変動しますが、必ず誰かが参加していて、参加者の方々と「おはようございます」と挨拶を交わすと、とっても嬉しい気持ちになりました。もし参加してみたいなと思った方は気軽にゴミ袋を持って清掃活動をしている方に声をかけてみてくださいね。

普段は見られないバックヤードも拝見!

研修中は、お客さんとしてコンサートに行くだけでは見られない部分も、色々紹介していただきました。

まずは調光室。基本の設定はしてあって、その設定を舞台のすぐ側で調整できるようになっているそうです。

ちなみに、調光室からはこんな風に舞台が見えます。

他にも舞台裏の部分も見せていただきました。

また、演奏者の皆さんが気軽に音出しが出来る、リハーサル室もあります。

控え室にはソファーやシャワールームもあり、出演者の皆さんが快適に過ごすことが出来るようになっていました。

ちなみに、宗次ホールの素晴らしい音響については、宗次ホールのホームページ内で紹介されているPDFデータにまとめられていますが、下記の資料の中でも紹介されている天井残響可変幕を下ろした状態も見せていただきました。

宗次ホールの音響設計要点と室内音響特性について
http://www.kad.co.jp/Report/200703_MunetsuguHall_AcousticDesign.pdf

暮らしの中にクラシック

「暮らしの中にクラシック」これは宗次ホールのキャッチフレーズです。

この言葉が表すように、宗次ホールの取り組みは、クラシック音楽をより身近に、暮らしの中に溶け込む仕掛けがたくさん散りばめられています。

例えば、コンサートが開催される日には、大通り沿いにはこんな風にのぼりが立っています。

また、ふらっとホールの前を通りかかったお客様がチラシを持って帰ることが出来るようになっています。

これらの仕組みには、CoCo壱番屋の創業者であり、長年お客様に寄り添って来られた宗次さんの思いを感じます。

さいごに

今回、研修をさせていただいたことで、現在建設しようとしているホールにどのような設備が必要なのか?また、これまでよく見てきたホールだけでなく、バックヤード部分についても理想とするビジョンを持つことが出来ました。

そして、支配人の野間さんが仰ってくださった『人を呼び込む魅力的な企画』についても気付きをいただきました。

スタッフの皆様も本当に優しい方々ばかりで、多くの学びがあった1週間となりました。宗次ホールでの研修を活かし、ふるさと福知山の地域の皆様に必要とされる教育・文化芸術コンテンツを提供するホールの建設に向けて、引き続き邁進していきます。

宗次ホールの皆様、この度は大変お世話になり、ありがとうございました。

また、もしこの記事を読んで宗次ホールで働いてみたい!と興味を持たれた方は、ぜひお気軽に問い合わせをしてみてください。

▼スタッフ募集のお知らせ
https://munetsuguhall.com/recruitment/staff.html

*1・・・宗次徳二氏の名前は、正確には德と表記する

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