袴田美帆 帰国記念サクソフォンリサイタル開催レポート

こんにちは。株式会社locatell社員の袴田美帆です。

2月24日に、愛知県一宮市のオリナス一宮で開催した、袴田美帆帰国記念サクソフォンリサイタル『サクソフォンで織りなす、パリと一宮』が終演しました。

この投稿では、コンサートの準備から当日の様子を、写真と共にレポートします。

まず、前日の会場準備や、当日の会場の雰囲気が伝わるダイジェスト映像をご覧ください。

サクソフォンで織りなす、パリと一宮:公演に込めた想いとプログラム

本公演のタイトル『サクソフォンで織りなす、パリと一宮』には、私が20代のほぼ全ての時間を過ごし、“サクソフォニスト・袴田美帆”をつくってくれた大切な街・パリと、伝統的な織物産業が有名な故郷・愛知県一宮市を音楽で繋ぎたい!という思いを込めました。

色彩豊かなフランス音楽と故郷への想いが感じられる作品を中心にプログラムを組み、去年の6月にパリで初演した一宮市の織物文化をテーマにした即興作品『糸をみなへし』も演奏しました。

プログラム
・エドヴァルド・グリーグ / 抒情小曲集 第10集 作品71より 『むかしむかし』
・アンドレ・カプレ/ サクソフォンとピアノのためのレジェンド
 編曲:クリストフ・ボワ(パリ国立高等音楽院サクソフォン科助教授)
・ポール・モーリス / プロヴァンスの風景
〜休憩〜
・一宮機織唄 / 愛知県民謡
・糸をみなへし(一宮機織唄と、毛織物工場で録音した織機の音をテーマにした即興演奏)
 協力:葛利毛織工業 電子音楽:青柿将大
・エドヴァルド・グリーグ / 抒情小曲集 第10集 作品71より『森の静けさ』『ハリング(ノルウェー舞曲)』
・エルヴィン・シュルホフ / ホット=ソナタ(ジャズ=ソナタ)

故郷・愛知県一宮市の文化を紹介

『糸にみなへし』の電子音の中に使われている、一宮で歌い継がれてきた民謡『一宮機織唄』を紹介するため、一宮機織り唄保存会のお2人をお招きし、サクソフォン・三味線・尺八のトリオでも演奏しました。

今後も、一宮市の文化を多くの人に知ってもらうきっかけをつくりたいと思っているので、この機織り文化を取り入れた活動は続けていきたいと思います。

一宮機織唄と、毛織物工場で録音した織機の音をテーマにした即興演奏とは?

公演の後半、1曲目は一宮機織唄と、毛織物工場で録音した織機の音をテーマにした即興演奏をお届けしました。

ここで作曲家の青柿将大さんによる『糸をみなへし』のプログラムノートをご紹介します。

エレクトロニクス(電子音)とサクソフォンによるこの即興音楽は、エレクトロニクスの素材として、袴田さんが故郷の一宮市で録音した機織り機の音、そして一宮機織唄を歌う彼女の声を主に用いています。紀友則が詠んだ和歌(古今和歌集収載)から採られた『糸をみなへし』(糸、女郎花/糸を皆綜し=あちこちに糸を張る)というタイトルが示唆する通り、機織りの無機的な機械音から始まる音楽は、次第に有機的な人間の声へ、時代を超えて歌い継がれる唄へと伝播し、様々な音の糸を演奏空間に張り巡らせながらその歩みを進めていきます。(青柿将大)

即興演奏なので、この曲の楽譜はありません。

それは、“口頭伝承で歌い継がれてきた民謡”をテーマにするなら、楽譜には起こさないと決めていたからです。

本来ならば“エレクトロニクスとサクソフォンの即興二重奏”として、青柿さんとライブ演奏するために作られたものですが、今回は人材・機材の問題もあり、固定音源とサクソフォンで行うことにしました。

今回の即興演奏で使用した機材は下記のとおりです。

・音源を流すパソコン
・音質のいいスピーカー最低2台(本来ならば8台)
・オーディオインターフェイス
・楽器につけるワイヤレスマイク

まず、この音源に使われているメインの音は、実際に工場見学に伺って録音した織機の音と、一宮機織唄を歌う私の声。

それが、青柿さんの手によって音色が変わり、リズムも変わり、「糸のように会場に張り巡らされる音」となって、スピーカーから現れます。

その音にインスピレーションを受けながら、サクソフォンの様々な音色をその場でつくり、一つの作品となっていくのです。

サクソフォンにもマイクをつけているのですが、これは、楽器の音をスピーカーからリバーブをかけて出した方が、エレクトロニクスの音とマッチするから。

エレクトロニクスとの即興演奏を地方で実現するのは、人材・機材の問題が大きく大変ですが、私がここまで熱く音楽を続けて来れたのも、即興演奏やエレクトロニクスとの出会いのおかげなので、これからもたくさんの方を巻き込んで続けていきたいと思います!

1曲ごとに曲にまつわるエピソードを解説

今回は、それぞれの曲に関するエピソードがお客様に伝わるよう、1曲ごとに曲解説を行いました。

中でも反響が大きかったのが、ポール・モーリス作曲『プロヴァンスの風景』です。

5楽章から成るこの曲は、1楽章ごとに南仏・プロヴァンス地方にまつわる作曲家の想いが込められています。

そこで、ピアニスト・高崎さんにお願いし、曲がイメージできそうな解説に合わせて、1フレーズずつ弾いていくという、簡単な曲紹介を行うことにしました。

実際に話した後に演奏すると、演奏者も作品の雰囲気に入りやすくて、もう2人で何十回と一緒に弾いてきた曲にもかかわらず、とても新鮮な曲づくりをすることができました。

サクソフォンのレパートリーって、どうしてもマイナーな作曲家に偏ってしまうのですが、サクソフォンならではの華やかさ、表現の自由さを伝えたい!という想いから、今回のリサイタルでは曲の物語性にアプローチ。

これからも初心を忘れず、素敵な音楽を発見する機会を、たくさんの方に届けられるよう、1回1回大切に演奏・MCをしていきたいと思います。

会場下見などのリサイタル準備について

代表の吉田とオリナス一宮を訪れました

1月には弊社の吉田も会場となるオリナス一宮を下見し、会場を管轄している一宮市役所の担当課へご挨拶しました。

実際に会場設備の確認や、市の後援申請、また市の記者クラブに公演の開催情報を投函するなど、リモートではできなかった作業を吉田と一緒に行いました。

後援・助成・協賛について

今回、コンサートを開催するにあたり、一宮市には後援申請を行いました。

弊社主催で一宮市でコンサートを開催するのは初めてだったので、コンサートの詳細だけでなく、会社の事業に関連する資料を準備しました。

また、一般社団法人ビトゥイン・ミュージック・タイズ様に助成いただくにあたり、本公演がどのように地域文化に寄与するのか、また私自身の音楽活動において本公演がどのような位置付けとなるのかをお伝えするための資料の作成も行いました。

さらに、私が先日講演とコンサートを行った、一宮市に本社を構える株式会社ILホールディングス様から協賛もいただきました。

ILホールディングス様の会社案内パンフレットは、コンサートのパンフレットと共にお渡ししていたこともあり、開場時や休憩中にゆっくりご覧いただいたお客様もたくさんおられました。

コンサートを開催するには多くの費用が必要となることから、こうして多くの方々に温かいご支援を賜りましたことに心より感謝申し上げます。

チケット販売について

今回チケット販売は、オンラインと紙チケットの2種類を用意しました。

オンラインチケットは来場してくださった方のうち3割の方が利用してくださいました。

ただ、やはり紙チケットの良さとして、人に呼びかけてもらいやすいという利点もあることから、今後もオンラインチケットと紙チケットのどちらも用意することが大切だと感じました。

ちなみに、紙チケットを販売してくださったのは、一宮で大人気の喫茶店『オリーヴの木』

吉田が一宮に来た際にも立ち寄り、一緒に美味しいブランチをいただきました!

普段リモートで仕事をしていることもありますが、こうして一宮でいつも懇意にしているお店を案内できたことも嬉しかったです。

集客について

今回、一宮市で初めてソロリサイタルを開催したため、集客に対する不安は当日まで尽きませんでした。

その上、企画を立ち上げたのが、昨年11月末。

3ヶ月で、どこまで広報に時間と労力をかけられるのかがネックでしたが、1ヶ月前まではなかなか席が埋まらず「このままだったらどうしよう…」と思っていました。

しかし、不安に思うだけでは何も変わりません。

いつも応援してくださっている市内の皆さまはじめ、中・高生や先生方、吹奏楽団の皆さま、オリーヴの木のお客さまなど、まずは自分のことを知ってもらえるよう、思いつく限りのところにご挨拶に伺いました。

日本での集客経験が少なかった私にとって、今回のリサイタル開催で広報・集客に関する学びはとても大きかったです。

これからはもっと計画的に動き、地方でコンサートを開催する際の集客に強くならなければ、と実感しました。

また、今回の会場は客席数に限りがあったことから、公演前日はオンラインチケットの販売が終了したあとは、吉田が当日券の枚数の計算や調整をしてくれました。

結果的に、当日は130名のお客様がお越しくださり、無事に公演を終えることができました。

オリナス一宮で初の試みとなった、グランドピアノを搬入したコンサート

ピアノを搬入する際の様子

今回リサイタル会場に選んだオリナス一宮には、常設のピアノがありません。

それでもここを選んだのは、下記の理由です。

・オリナスという名前が、コンサートのコンセプトにぴったりだったこと
・旧名古屋銀行を再生した、歴史ある建物だということ
・会場が綺麗なこと
・100〜130人というキャパシティがちょうど良かったこと
・駅からのアクセスが良いこと

ここにしかない良さがあったので、もしピアノの問題を解決できるのであれば、絶対オリナス一宮で開催したいなと思ったんです。

ただ、市の施設に一度も入れたことのないグランドピアノを搬入するためには、グランドピアノを搬入することが安全であることを証明しなければなりませんでした。

今回は名古屋ピアノ調律センターの方に楽器の運搬と調律をお世話になったのですが、事前に搬入のシュミレーションを行うなど、たくさんの方々にご協力いただき、無事に当日を迎えることができました。

こだわりのチラシとプログラム

今回のチラシとプログラムは、柔らかい色味で“織りなす”要素が伝わるようなデザインをお願いしました。

チラシ・プログラム制作を担当してくださったのは、デザイナーの南裕子さん。

私の「こんなものを作りたい!」という想いを形にしてくださいました!

優しい印象を出すために温かみのある上質紙を用いて、デザインにもピッタリの綺麗なチラシとプログラムができました。


特にプログラムは、曲目解説が見開きで読めるような配置にしたり、ピアニスト・高崎優芽さんとの思い出の写真も入れるなど、全てのページにこだわりが詰まっています。

前日・当日の動き

前日は、吉田と映像を担当してくださった葛和さんが現地入りし、ピアノの搬入と、会場のセッティング、リハーサルを行いました。

今回は、即興演奏のプログラムで音響設備を使用することになっていたので、音響セットも会場持ち込みました。

セッティングや音量調整はお任せし、出演者はリハーサルに集中することができたので、とても助かりました。

2月には、弊社で行ったフランス国立管弦楽団 首席フルート奏者 シルヴィア・カレッドゥ氏のアーティストマネジメント公演に同行し、演奏者が演奏に集中できる環境をつくる大切さを実感していました。

また、決められた時間であっても変更されることが当たり前にあるフランスでは見たこともなかった、正確な進行表に沿って進む様子は、演奏者の立場として見たときにとても新鮮で、安心感があり、細部まで行き届くLocatellの公演制作に、より一層誇りを感じました。

また当日は、ステージマネージャーとして、かすがい市民文化財団の西野さん、受付としてクラリネット奏者の西前さんが手伝ってくださり、パンフレットとアンケートの準備や受付のセッティングなども、全て皆さんが行ってくれました。

皆さま本当にありがとうございます!

公演の様子が中日新聞に掲載/公演の前パブ・後パブについて

今回のコンサートの開催情報は、一宮市のイベント情報を発信するインスタグラムアカウント『メディアいちのみや』に掲載されたり、公演後にもインスタグラムでたくさんの方にシェアしていただけたり、開催の様子をたくさん共有してもらえたのがとても嬉しかったです。

また、コンサートの翌日には、中日新聞尾張版・中日新聞電子版に、公演の様子がカラー写真と共に掲載されました。

▼中日新聞 |地元の一宮で初のソロ公演 欧州留学から帰国、サックス・袴田美帆さん
https://www.chunichi.co.jp/article/859084

吉田が直接編集部に取材依頼をしたのですが、当日の取材対応などは私がコンサートの最中で対応できなかったことから、全て吉田が行ってくれました。

新聞に掲載されたことで、当日来られなかった方からも温かいメッセージをいただけたり、後日講演に伺う学校関係者の皆さまに参考資料として使っていただくことができました。

お客さまのお声

当日は、小さなお子さまから90代の大人の方まで、本当に幅広い世代の皆さまにお越しいただきました。

また、母校の吹奏楽部をはじめとする学生の皆さんも、応援に駆けつけてくれました。

アンケートも作成したところ、たくさんの方から嬉しいお言葉をいただいたので、少しご紹介いたします。

・こんな外国の異文化と、地元文化の融合を、若い世代の方に感じてほしいと思いました。
・一宮で美しい音色が聴けて最高!時間が過ぎるのがあっという間でした。
・サクソフォンでこんなに幅広い表現ができるんだと、驚きの連続でした。
・『糸に皆へし』は故郷への愛を感じ、自由で新しいスタイルの表現に圧倒されました。
・ずっと一宮に住んでいますが、一宮にもっと誇りを持っていいんだ!と思わせてくれました。
・サクソフォンとピアノの融合がこんなに綺麗で感動しました。
・お二人の息がぴったりで気持ちよかったです!
・目の前に外国の風景が浮かぶようでした。
・会場との一体感があってよかったです。

さいごに

当日ご来場いただいた皆さま、そして、今回のコンサート開催にあたり、協力してくださった全ての方々に、心から感謝いたします。

あたたかいお客さまに囲まれて、大好きな音楽を演奏することができて、とても幸せでした。

今後も地元での活動を広げていきたいと思っているので、たくさんの皆さんと音楽を共有できるよう、これからも頑張ります!

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